■プロフィール
村上 弥生
修士課程修了後、女子短期大学講師を務めながら山村民俗学調査を始め、山地での植物の利用や加工の技術などについて調査を行ってきました。
大学院博士後期課程に編入学し、かつて、山で採取または栽培されていた原料を使って、山村で盛んに作られていた和紙の加工や抄造の技術にポイントを置いて学位論文作成に取り組むことにしたとき、和紙の技法が形を変えて現代にも生かされていることを知って興味を持ち、愛媛県の川之江や高知県のいの町などの産地で多くの聞き取り調査をさせてもらいました。その中で高知県吾川郡いの町では、明治時代に本格的に和紙の変革の動きをおこす中心となった吉井源太の日記を非公開で保存されていることを知り、日記の内容を読み解いて、当時の和紙技術開発の状況を明らかにしたいと考えました。町で日記を管理されている責任者の方といろいろお話しした結果、日記を読むことを許可され、取り組んできました。それらの結果を中心に論文を発表し、それらをまとめて学位論文を作成して2009年に京都大学博士(農学)を取得しました。
いの町とは吉井源太没後100年記念の企画展および講演会(2008年)をはじめとして、視点を変えた企画展の監修や講演などをさせていただくことになり、これまでに五回を重ねています。和紙抄造に取り組む技能者の情熱に心を動かされ、歴史の中に、また現代において和紙に真剣に向き合う方々の取組を探して研究をしていきたいと考えています。