23.現代語訳防寒紙

吉井源太著『日本製紙論』より(現代語抄訳)

【防寒紙】
防寒紙は紙製衣服の原料で、衣服にすると軽く、きわめて温かい。日清戦争の時に我が軍隊に防寒のため寄贈したことで、当時は防寒紙と称して内外に名声を博した。
土佐においては維新のころまで紙子という紙製の衣服があった。儀式用だったが、明治維新後の改革で、まったく使われなくなっていた。防寒紙はこれを改良したもので、往時の紙子に比べれば、はるかに強靱さに富み、保存にも優れている。軍隊で試着してみたところ、4週間ぐらいは効力十分で、軽少で使用目的を達するのは確実といわれた。
平和後の今日では、ロシアのウラジオ地方より我が国へこの紙の注文が来たこともある。原料には繊維の粗大な楮皮が使えて、また、漂白も他の紙類のように純白でなくてよい。厚い紙ではあるが、水に弱いと目的を達せられない。ゆえに、強靱さを増すためにコンニャクやミョウバンなどを混ぜて漉く。
これらのことは往時の紙子にはしなかったので、一層の改良点といえる。土佐のみならず東京でも防寒紙を作って軍隊に送ったことがあったが、ただ外観を飾り、模様などを付けて美麗にしたため、使用中すぐに破損して、保存期間もきわめて短く、たちまち軍人の信用を失墜した。目先の私利に汲々として、紙業の不信用を誘い、あわせて我が軍隊の死地にある者を利用しようとするに至っては、どういう考えかと推測に苦しむ。