19.防水紙

防水紙(水凌紙)

水を通さない紙。『日本製紙論』には「松脂(まつやに)」と「石綿(いしわた)」の使い方や、これらを入れた紙について書かれている。松脂は、紙がインクをにじませたり、水にぬれて弱くなることを防ぐ働きをする。また石綿は、火に燃えることに耐える性質をもたせる。水と火というのは、紙の大きな弱点で、これらはその弱点を補強することになる。
松脂というのは、松の木からとれる樹脂で、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)などと一緒に熱を加えて溶かしてから使う。これにミョウバンを加えたものを紙漉槽(すきぶね)に入れて紙を漉くと、インクで書いてもにじみにくい紙ができる。
また、水をまったく通さない紙にすることもできるようになるので、傘や合羽(かっぱ)のような雨よけのための紙にすることもできる。またさらに桐油(きりあぶら)(アブラギリの種子からとれる油)を塗ることによって、いっそう雨に強くなるとも考えていた。
明治維新の約60年前にドイツで発明された方法で、80年ほどたった当時も、まだ新しい技術だった。源太は、明治19年に農商務省農務局員の山崎喜(き)都(つ)真(ま)という人に頼んで教えてもらった。
防水紙の用途について源太は、軍事用を考えていた。軍艦内部や野営の際に使うテントにできるのではないかなどの案を書いている。

◇◆ 注釈 ◆◇
松脂(まつやに)を水蒸気で蒸留してテレピン油をとった後にロジンといわれる成分が残り、これが製紙に使われる。このロジンの微細な粒子が紙の繊維に定着するため、水に強い紙となる。ロジンが水に溶けるようにしたあと、紙料液の中でこれを紙の繊維に定着させるために、ミョウバンが使われる。