16.日本製紙論サイジング

吉井源太著『日本製紙論』より(現代語訳)

【サイジングの方法】
松脂(まつやに)石鹸を製造するには水5斗(18リットル×5)に洗濯曹達(ソーダ)(炭酸ナトリウム)1貫目(3.75kg)と松脂1 貫目(3.75kg)とを混和する(松脂は蒸気を通して粉末としたもの)。
まず水を沸騰させて後に洗濯曹達を入れ、十分に溶解したら、徐々に松脂を投入する。このとき泡を発生してあふれ出るので、松脂は数度に分けて加えると共に、絶えずかき混ぜることが必要である。
4、5時間すると松脂は洗濯曹達(炭酸ナトリウム)と反応して石鹸を作る。反応が進むにつれて泡は減少し、ほぼ終了したときは飴のようになって透明なものとなる。これをしばらく冷ませば粘ったものが凝結して、泡はまったくなくなる。その少量を取ってぬるま湯に溶かした時、褐白色の液となり、溶けない物がまったくなければ松脂と曹達が十分良く混じり合っている。
これにミョウバンを加えなければ効力がない。なぜなら石鹸は曹達と松脂の化合したものであり、これにミョウバンを加えるとミョウバン中の硫酸と曹達が反応して硫酸曹達となり、礬土(ばんど)(酸化アルミニウム)と松脂を分離して繊維の隙間に密に入り込むからである。
松脂石鹸を使用すると紙面は非常に光沢を生じる。これを使用した紙は水分が浸潤するのを防ぎ、容易に水によって破損しない。しかし、この紙には文字または絵画を写そうとしても墨汁の吸収が十分でなくなることは、やむをえない結果である。
この欠点を補うためにニカワを加える。書画の透写に用いるものは紙質が透明でよく透けることが必要であると共に、墨汁の浸潤を防ぎかつ吸収力に富まなければならない。このような紙を製造するにはミョウバンを用いてさらにニカワを混合する必要がある。これは水1升(1.8リットル)にミョウバン5匁(3.75g×5)、ニカワ8匁 (3.75g×8)の割合で混合し、1時間くらい煮る。よく煮熟したときにこれを布でろ過して紙槽中に混合する。