11.ドウサ漉入図写紙

ドウサ漉入図写紙

書や画の上に置いて、その形をなぞる「透写」に使う紙。単に図写紙ともいう。
『日本製紙論』では、上質な紙であれば、人物画の髪や鳥の羽などの細かい線までよくわかり、きれいに写すことができると説明されている。ドウサとは、ニカワとミョウバンを混ぜたもので、これを入れるのは、原図の墨の線を見やすくすることと、なぞる時に墨汁がしみてしまうことを防ぐ目的による。
江戸時代までは、浮世絵用紙などでドウサを紙の表面に刷毛で塗って乾かしていたが、手間がかかる。源太は、これを原料の中に混ぜ込む方法を開発した。ドウサの量については特に注意が必要とされた。また、紙についても、透明度が増すような原料処理をしたうえで、漉簀(すきず)の跡や厚さのばらつきがない薄い紙を漉くことが必要で、しかも、原図の色々な大きさに対応できるように大判でなくてはならないので、高度の技術が必要だった。
源太は、欧米にあるトレーシングペーパーという高価な紙の代用品とすることを目指し、改良していくことを皆に勧めた。

◇◆ 注釈 ◆◇
このような紙の製造についてエピソードがある。明治28年に京都府で開かれた第四回内国勧業博覧会で、大蔵省印刷局抄紙部の築山技師から、ドウサを原料に入れ込んで漉くというようなことはできないといわれた。源太の出品した紙を品質検査してみた結果、その方法でうまく漉かれており、にじみ止めなどの効果も発揮されていることがわかって、技師は、自分たちが米国で実験をして漉いてみた時には十分な結果が出なかったのにと言って、この紙を称賛した。
同様の原料で漉き、薄いものを図写紙、厚めのものを図引紙としていた。図引紙は主に製図用に用いられ、近年まで手漉きが行われていた。