紙と機能について
平安時代に紙を使っていた上流階級の人々は雁皮(がんぴ)原料で漉(す)かれた紙をとても好み、装飾などを施して美しく和歌を書きつけたり、生活用紙として大切に使っていました。
紙が多くの人に使われるようになった江戸時代、製造された紙のほとんどは楮原料で漉いたものでした。楮原料で漉かれた紙は、私たちのもつ「和紙」のイメージで、強い紙であり、墨などをよく吸収する紙です。
明治になり、生活や産業の様子が変わるとともに求められることになったのは、薄くてなめらか、そしてある程度、水をはじく紙になりました。雁皮の紙はその条件を満たすもので、これをますます改良するとともに、雁皮に似た特徴を持つ三椏(みつまた)を原料として雁皮紙の代替にすることが必要になりました。
また、楮の強い紙にも色々な技術を加えて近代的な生活・産業に役立つ紙にする方法が考えられました。
このように、吉井源太をはじめとする紙匠・紙工たちは技術的な研究をおこない、従来の紙を改良しながら、社会から紙に求められる要求を満たす機能的で新しい紙を作り出していったのです。