11.世界が認める修復用紙

世界が認める修復用紙
―よみがえる名画や古文書―

近年の典具帖紙は、その薄さ・柔軟性・保存性などの適性から、文化財の保存・修復にも活用されるようになった。

現在、手漉きはもちろん、さらに薄い機械抄きの典具帖紙が、世界の文化財修復現場で使われている。世界で最も薄い紙として、ひだか和紙(日高村)の典具帖紙は、手漉きの0.03~0.05mmを超える厚さ0.02mmを実現し、大英博物館やルーブル美術館などでも使われている。

修復の用途は、紙の古文書や絵画、彫刻など多岐に及ぶ。たとえば古文書の修復には裏打ちが一般的だが、半透明の典具帖紙は表からも裏からも補強することができる。また、イタリアのフレスコ画の場合は、絵の具で修復する前の洗浄作業に、汚れを吸い取らせる素材として、典具帖紙と水やアンモニアなどを使う。

修復用紙の場合、手漉きでも機械抄きでも、原料処理の際、灰煮(ソーダ灰などで煮る)にするなど、製造工程で極力、化学薬品を使わないなどの配慮が必要となる。

和紙が世界の紙文化財修復に使われるようになったきっかけは、昭和41(1966)年にイタリアのフィレンツェで起こった大規模な洪水によって、ルネッサンス期の古文書や美術品などが大きな損傷を受けたことだった。その際、修復の専門家たちが和紙の化学的組成や特性などを調査して、適性が認められた。